崩壊序曲 レビュー
ネタバレ部は同化させてあります
以下ストーリー感想
セミナーに唆されて堕ちていく若い男女を追った作品
といえばそれまでですが
ここには近しい人間関係ですら対応できなかった深い心の傷に対する
周囲及び自身のアプローチの仕方について考えさせられる作品だったでしょう
ひとまず各EDについて簡単に
(1)刺される
もともとの深雪の目的が"孝広にもっと喜んでもらう"だったため、この時点でその目的が意味をなくしてしまっています
そこから向かう先となれば、しがみつくことも十分考えられますね
ただこの展開は途中でなんとなく結末として読めてしまうため、少々ありきたりかな?とも思いました
(2)公開レズ
新たに犠牲者を2人増やすエンド
ここでは晴彦の性格に大きな変化が見られました
失って気づく存在の大きさ、というテーマはこうしたゲームに限らず様々なところで見かけることになりますが
ここで晴彦のその後をそこそこしっかり書いていたところは高評価です
・・・ところで孝広くんはおそらく放置ですかね?
(3)Like a Beast
"くうねるあそぶ"ではなく"くうねるおなる"エンド
解放時の深雪は完全に獣と化していてここまで変わるのかと驚かされました
こちらのバックに関するストーリーはないですが
あの選択肢でどうしてこうも変わるのか、というところがちょっと気になります
(4)一人でダイブ
封印されていた記憶を一気に解放した一言は気になりますね
真実に耐え切れなくなって飛ぶ、というそこそこありがちな終幕に
いかにもHAPPYのような前提を持ってくる (ちょっと螺旋回廊2のグランドEDっぽかったです)
見事でした
(5)TRUE?
(4)とは異なり2人で心中
主人公の積み重ねてきた2年がどういったものだったのか、
その過程がもう少しはっきりしていればこの決断の重さもより増したのではないかと思うとちょっと残念
愛しているけど素直に愛せないことが苦痛、というのはある種の"介護疲れ"にも見えました
残された3人はこの決断をどう受け止めたのでしょうか?
特に沙織は自立できていたかどうか微妙なのでそこんとこもちょっとあれば
次の崩壊の幕開けが見れたかもしれませんね
・"自己の尊重"について
今回多くのトラブルとなった自己啓発(自己開発)セミナー"自己の尊重"
プレイ開始時はどう価値観をズラしてくれるだろうかと大いに期待していました
実際深雪やみさきの変貌を見ると間違いなく効果はあったのですが
トレーナーがあくまで"悪役" (純粋にズラそうとしているように見えず悪意がチラチラ見える)
であったことがちょっと残念
キャラ的に"私も救われた"と言っていた真巳子が純粋に堕とすのを期待していましたが・・・
エンド(4)の最後の公園のシーンを見る限り本心ではなかったんじゃないかなぁという感じで終わってしまいました
全体的に中途半端でなければもっとのめり込めていたと思います
・深雪を止めることはできなかったのか
そもそも深雪が"自己の尊重"に足を運ばなければ起こらなかった事態
では、深雪を止めるためにできたことはどのようなものだったでしょうか
まず孝広
もともと他人から始まった関係ですし日も浅いことから踏み込むのをためらってしまうところは仕方ないですね
唯一挙げるとすれば肝心な時に深雪からの連絡に応じなかったということになりそうですが
完全に予測するのは難しいですし本来なら"ちょっとしたズレ"で済んでしまうことのため
孝広の要因はあまり大きくなさそうです
次に晴彦
信号で見かけた時に~というシーンがありましたが、それはあくまで直接的なもの
そもそもそこに到達する前にストップをかけることがベターでしょうし晴彦も大きくなさそうですね
で、沙織
晴彦との会話では本気で心配しているようなことを仄めかすセリフがいくつかありましたが
そこは面と向かって素直になれよと
ある程度深雪を追い詰める要因として沙織の言動があったことは十分考えられるのではないかと思います
ここまでをまとめると一番近いところにいた沙織の言動かなという気もするのですが
家族関係が微妙であることも考慮すると
それらを育むのに十分な"大人"が欠けていたということがより後ろの背景として考えられそうです
で、この家族関係は当人でどうにかできるものでもありません
したがって、他者が深雪のストッパーとして活きたという可能性は低そうです
では当人の場合は?
深雪の持つ様々な過去やコンプレックスを深雪が克服すれば~ということも考えられますが
余程の人でない限りこれは無理でしょう、そう簡単に乗り越えられるものではありません
まとめますと、ほぼ不可能です
回避するには相応の"世界(視野)の広さ"を持つことが求められますが
若い男女にそれを要求するのも難しいです
ところで、フォロワーに言われて気が付いた未成年飲酒の描写についてですが
あれは"孝広は割と場の雰囲気にノっちゃう感じでそこまで自身の根を深く張れていない"
ということの暗示なのでしょうか?気になります
グラフィック感想
原画は相川先生
クライミライの原画でもおなじみの方
深雪や真巳子の大人っぽい感じや逆にみさきの幼い印象はしっかりしています
ただ、登場するキャラの年齢に幅がそこまでないので全体的に似たように見えるかもしれません
BGM/OP感想
OP曲はなし
BGMはピアノ中心でシリアスな場面では光りますが
焦りがちょっと足りなかったかなという感じです
システム感想
セーブ40(1つオートセーブスロットのため実質39)はChapterの個数を考えると少々少なめ
スキップ速度に不満はなし
未読スキップ停止機能の代わりに既読を自動スキップさせれば読み逃しもなくなるかと
バックログがホイールで出せればよりよかったのですがそこは古いということもあり妥協
(スクロール系だったのは嬉しいですね)
プレイ時に一部環境でメッセージが上書きされて残ってしまう不具合が発生する恐れがあります
参考スクリーンショット (通常画面)
参考スクリーンショット (バックログ)
修正ファイルも出ていないのでそこは我慢するしかなさそうです・・・
TRUEの最後だけノベルゲームのように画面にメッセージを流すようにしてあえて差異をつけたのはお見事
終局に向かっている、ということを強調するいい演出でした
以下総合評価
ストーリー 18/20 (現実味もあって入り込みやすい作品です)
キャラクター 18/20 (メインキャラの揺れ具合は素晴らしい)
グラフィック 14/20 (ところどころ狂気やエロさが光ります)
音楽 12/20 (ピアノだけ、というのは単調だったかも)
システム 14/20 (意外と整っていてびっくり)
コストパフォーマンス+ 120% (セミナー系でここまでやる作品はそうそうないのでは?)
計 (18+18+14+12+14)× 1.2 = 91 (欲を言うなら2年のブランクをもっと丁寧に積んでほしかったです)
以上でレビュー終了です