つくとり レビュー
"螺旋回廊"、"贖罪の教室"、"セイレムの魔女たち"、"ユメミルクスリ"などで有名なrúfの最終作
ネタバレ部は同化させてあります
以下共通ルート感想
まず大きなイメージとして"常識の通用しない閉鎖空間"という点
更にムラ社会の濁った一面を徹底的に見せつけてくる展開
謎だけでなくその世界観においてもプレイヤーを追い詰めてきます
次々と生まれる"謎"は一見すると現実では起こり得ない出来事ばかりに見えます
これによりプレイヤー側が常に人や物を疑うようにプレイすることになり
登場人物全員に裏があるのでは?と探るのは飽きません
以下個別ルートの感想
月鳥の姫編 (月に答へて鳥討たばさざめく森の姫が哭く編)
綺子、韵兄妹をピックアップしたルート
月鳥町で行われてきた長老を頂点とした権力社会の縮図を
イヤという程見せてきます
特に"兄妹の過去 (真章)"、"西沢のおばあちゃん (左記の一部)"、"ルルの裏切り"
は特にその最たるものだったのではないかと
圧倒的な上下関係の前では親友ですら裏切る
たまったもんじゃないですね
このように、その力を思う存分ふるうタカコ
そのタカコがつくとりを崇拝しているかというと実際はそんなことはなく
名前を利用してただ粛清を続けるという大変"頭の良い"長老
一族の過去を捨てようと必死な様子は裏を知ると滑稽にも見えます
真章における違いは"久十生がいるかいないか"
脱出や事件の解決で大きな役割を果たします
最後は対話を呼びかけ未来を感じさせるエンド
このまま終わってもよかったのですが・・・
鬼子来る編 (堅州国より鬼子くる三度殺めて櫃に入れ)
森下姉妹の過去にスポットを当てたパラレルストーリー
"リリ"の存在を匂わせつつもはっきりとさせない展開は
常にプレイヤーの意識をそちらに向けさせる手段として有効
親子関係の裏側、弥生が靜眞を殺さなければいけなかった理由
後編の序盤にはそういったものが詰め込まれていました
一方でルルについては唐突に感じる点が残ってしまう形に
火をつけた後突然豹変したことやラストで急に前面に出てきた一面など
ルル視点があればこの急激な変化をもっと緩く捉えられたのではないかと思います
八鏡編 (神代のしずく絶えつとき八鏡が朱に染まる)
研究所内部をメインとしたパラレルストーリー
グリューン視点をメインとして進みます
フォレストやキリィが殺害される経緯や
ラルースの死の真相がここで明らかに
グリューンの過去(グリーン・フォークとの出会い)についても触れられており
この辺は本編での行動を補完するものとして十分な内容でした
一方で、このルートでのみ独自に動いていた(いることが判明した)準
彼女や杳にまつわる新事実は上記とは異なり付け足し感が強め
この後の神代編でその設定は生きてくるのですが最後までとってつけたような
印象は拭えませんでした
(これらによってスケールが想像以上に大きくなっていったというのも関係していますが・・・)
神代編 (風の淵に焔立つ万世、千代にと神無名満つ)
月鳥の姫編のその後を描いたもの
ここでも新要素が次々と登場します
おそらく久十生をラスボスとするための追記だと思うのですが
この部分が必要であったかと言うと前述の準の設定と同様で
"あってもなくてもよい"と感じてしまいます
この部分だけで急に膨らんでしまった印象が強いので
"愛護の会"関連をもう少し月鳥の姫編で絡ませてほしかったです
ミーナの設定だけは少々飛びぬけていた感じが
他の方法もあったのではないかなと思いました
(ミーナの立ち絵の出番はこのシーンのみでしたし)
総評
謎をプレイヤーに提示し複数視点でそれを紐解いていく過程はバッチリ
またそれらが引き起こされる空間において発生する
"我々が不条理と感じるもの・こと"が次々と襲ってくる様子は
それをメインの題材としていなくとも
田舎というものに対して肯定的なイメージを持っている人に対する
"最悪の提示"というアプローチが可能と思われます
また、様々な宗教が絡み合う部分については
後半で付け足されたように出てくる展開でなければ
それぞれの信条のぶつかり合いからより惹きこまれるイベントが生まれたのではないかと
ただ、選択の自由の重要性は強く再認識させられました
グラフィック感想
原画はぼうのうと氏
目をあまり大きく描かないキャラは可愛いを前面に出しておらず
逆に作品の雰囲気をかみ合っていました
ただ、絵そのものがあまり安定しておらず
いくつか気になるCGがあったのは少し残念です
立ち絵そのものに関しては、ミーナなどもう少しどうにかなったのでは・・・
と思うキャラが数人
表情の変化もそこまで苛烈ではないため絵単体では単調に感じるかもしれません
ボーカル曲感想
OP/ED共にボーカル曲
OPの"ひとひら"は和を意識させるサウンドと歌い方が
古くからの街並みをイメージさせてくれます
EDの"ありがとう"はタイトル通り感謝の曲
あまりゲームの中身と強烈にリンクしている内容ではありませんが
〆を飾るにふさわしいつくりとなっています
システム感想
2007年のゲームということもあり比較的動作は安定しています
強制終了やフリーズもありませんでした
セーブスロットも約100あるので余程でなければ十分足りるかと
超凝った演出などはありませんが一通り必要なものがまとまっている、という感じです
以下総合評価
ストーリー 18/20 (題材は◎、付け足し感がなければもっと・・・)
キャラクター 15/20 (個としての印象は薄め、もっと活かせていたかも)
グラフィック 12/20 (好き嫌いを選ぶと思います)
音楽 14/20 (ボーカル曲はどちらも聞き入るタイプで沁みます)
システム 14/20
コストパフォーマンス+ 120% (サスペンスというテーマはお見事)
計 (18+15+12+14+14)× 1.2 = 88 (まだまだ化けたかもしれないですね)
以上でレビュー終了です
ピンポンぱんつ!-湯河原学園美少女☆温泉卓球部- レビュー
2016年8月現在ACTRESSの最終作
ネタバレ部は同化させてあります
以下ストーリー感想
エロに燃える主人公の熱血青春ストーリー
という程のボリュームもなく
そこまでアップダウンもありません
個別で妊娠疑惑やヘタレをこじらせた温泉卓球勝負などありますが
ここがポイント!というところは見つけられず
エロメインという印象を受けました
主人公は全体的にアホをやって総ツッコミを喰らう立ち位置なので
笑って流す心は必要かもしれません
グラフィック感想
原画は千葉千夏氏
ところどころ首の角度など違和感が残りますが
過度に"可愛い"を攻めていない絵は大人びた印象を受けます
BGM/OP感想
OP/ED/挿入歌と3曲揃えています
中でも挿入歌の"ピンポンぱんつ体操 -行け! 温泉卓球部!-"(上記リンク)は秀逸
"体操"と名がつく割にそこまで気合の感じられないサウンド
公開されているムービーでは全く曲とリズムの合っていない振付
などある意味で見どころのある曲です
曲単体として見てもボーカルがソフトで癖になります
BGMは20曲弱程用意されていますが
挿入歌のインパクトが逆に強くてあまり印象には残りませんでした
システム感想
ACTGSという独自のシステムを使用
セーブスロットはストーリーの長さに対して十分用意されているかと
スキップも未読オンリースキップのおかげで周回は非常に楽でした
一方でバックログは"メッセ"と"ログ"が混在するという違和感の残る形
過去のACTRESS作品(虹を見つけたら教えて。など)ではメッセージ形式のバックログだったため
これが残っているものと思われますが、統一はできなかったのでしょうか・・・
以下総合評価
ストーリー 11/20
キャラクター 12/20
グラフィック 13/20
音楽 14/20
システム 13/20
コストパフォーマンス+ 105%
計 (11+12+13+14+13)× 1.05 = 66 (数こなした人には物足りなく感じるかもしれません)
以上でレビュー終了です